噺
〜♪ベケケベケベケベケデデンッ。
ああ〜どうも。出囃子を打ったものの、そこから面白いまくらは思い浮かぶことは無かった武甕亭とん助と申します。ぶっつけ本番はするもんじゃねぇな。いっけねぇ、こんな適当なことをするとまた師匠に怒られちまうや。
まぁ、気楽に読んでいってくださいや。
オイラ、どうも最近人の話を聞くことが、やけに多くてですねぇ。高座に上がる前、それこそ30分前まで、真打(歳上の隣人)の方々と3時間話させていただいた次第です。ま〜、真打つーのはただ老いぼれただけではなく、これがちゃんと中身のある話をしとくださるってんでぇ、オイラ耳かっぽじってしっかり聞かせていただきやしたぜぇ。
いやぁ近頃、人の話を本当によく聞くんもで、それこそ週に3回くらいは我々前座(いつもの隣人)共が集まりあって夜通し語り明かすんでさァ。
今日の稽古はどうだった、アイツは今日も与太話をしていたなんて、まぁ俗に言う愚痴を互い互いに吐き出す訳です。寝る前の禊とも言いましょうかね。
オイラそれだけで十分だったのに、まー有難いことに隣人に留まらず、行く先々で人の話に耳を傾けているわけでございやして。
そうして人の話を聞き続け、聞き屋みたいになってーと、不思議と人生どん詰まった人間も寄ってくるわけですよ。
昨夜も顔を真っ赤にして泣き腫らした知人が飛び込んできやしてねぇ。
師匠がなんかんだと言ってることが違うやら、汚い話銭がああだこうだと言ってきたわけでさァ。
昔のオイラでしたらどうにかこうにか力になれないもんかと、態々首を突っ込んでいったり、同情して涙を流した訳ですが。
あれ、いつの間にくだらない人間になったのやら。今じゃあ流してやれる涙はなく、ただ傍観しているわけでありやす。
きっと長いこと芝居をしていたのが逆に仇となったのでしょうねぇ。
半年前までは身を置いていましたが、そこからは足を洗いましたのでとっくに昔のような自分は流れちまったようです。
されども自分が腹をくくり、首を突っ込めば、解決しなくもない案件な訳でありやして。どうにかこうにかならんもんかと一夜明けた今でも考えているわけでぇ。
下手に介入しても迷惑でありますし、返って事態を悪くさせてしまうのでねぇ。
いやはや自分が絶対に必要とされている訳でもないので、ここはオイラの出る幕では無いだろうと葛藤つーのをしています。
ほんに、人の話を聞くつーのは大変ですねぇ。色んな人間がおりますから、中には踏み込みすぎて聞いちまうと変に好かれちまう。
どこまで線引きするのか。それはオイラがすることであって聞き手の見せる技。………………てぇーところですが、ここまで来て違和感にお気づきでしょうか。
そう、オイラ見ての通り(1日限りの)噺家でございやす。
ェエエエーイオイラに話をさせろ〜!テメェの口を二度と開けねぇようにかーちゃんに頼んで縫ってやらぁ〜!!!!!!
<座布団クルッ>
♪〜ベケケベケベケベケデデンッ
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